再読「このミス」2006年版東野圭吾インタビューなど

「このミス」2006年版の読み直し。
ランキング作品からの購入計画をまず行ったわけですが、次はやはりファンとして東野圭吾インタビューが気になるところ。
今まで「このミス」の隠し玉コーナーにも出てこないことに「何か関係が悪いのかな」と思ってました。


その内容ですが、まずランキング(or「このミス」)というものと相性が悪いのかという東野氏に対して、インタビュアー
は幾度となくランキングされていると返答。
ただし90年から96年がブランクとなっていることに対して、東野氏が「そのブランクのあいだも、自分としてはかなりの
自信作がいくつかあるんですが、ランキングにはまったく引っ掛かりませんでしたからね。」とコメント。



そこで89年『魔球』から97年『名探偵の掟』の間にどんな作品があったか。
野生時代」の東野氏自身の全作品解説での評価が高いと思われるもの、または私が気になる作品をチェックしてみました。



1990年


『宿命』宿命 (講談社文庫)
 これは他のインタビューでも自身のターニングポイントとされている作品ですね。ミステリのトリックなどよりも小説として
 のおもしろさを重視して描くように移行していく最初となった作品といえます。「実は昔の恋人でした」「運命的な出会い」
 などについては、今だったらやらないという事を書かれていますが、私はそのベタさが好きです。
 これってどこかのTV局でドラマ化してくれないかと思っていたところ、嫌な予感がして調べてみたら既にやってました。
 WOWWOWで。藤木直人柏原崇本上まなみのキャスト。柏原崇が苦労人の和倉勇作ですか。ひげでその人生を表現してる
 としたら「ちょっとなぁ」という感じで、しかも検索結果みると藤木直人が主役扱いなんですが。本上まなみはちょっと原作キャラ
 とは違う印象ですが好きなのでOKです。
 などと横道それてしまいましたが、本人コメント「これは好きな作品です」まずこれがランク外。


『仮面山荘殺人事件』仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)
 本人コメント「自分ではおもしろい作品だと思う」「びっくりするくらい売れなかった」という作品。実はこれ私が最初に読んだ
 東野作品なんです。かなり前から気になっていたミステリ作家だったのですが、最初がこの作品で幸福だったと思います。トリック
 から離れて本格を創り上げ、その手法が効果的に最後の驚きにつながる。これは「容疑者Xの献身」にも継承されている「東野本格」
 の柱だと思います。とはいえこれもランク外。


ちなみに90年「このミス91年版」の1位は『新宿鮫』で、警察小説・ハードボイルド・冒険小説がベスト10半数を占めるような
状況でした。本格系では『夜の蝉』『霧越邸殺人事件』『暗闇坂の人喰いの木』『頼子のために』『消失!』などの年です。


1991年


『変身』変身 (講談社文庫)
 本人コメントによると、あるひらめきよりたてられたプロットを脳に関する取材調査で裏づけし、人間描写で勝負した作品。かつ
 「かなり自信作で、これは絶対売れるぞと思っていた」しかも「講談社80周年記念特別書き下ろし」だったのだけど講談社担当者
 が乗ってくれず宣伝もされなかったので全然売れなかった、とのこと。
 これは何番目に読んだのかなぁ。上記「仮面」の後、その年のうちに東野氏の既刊作品は全て読んだのですが、本人もミステリか
 SFかと迷う内容のものが、違和感なく読めたので既に「東野ファン」となっていたと思います。
 主人公が彼女のそばかすを「なければいいのに」と思う部分を覚えているということは、まさに東野氏の目的通りの作品になって
 いるということでしょう。


『交通警察の夜』ISBN:4408531634(文庫化改題:天使の耳天使の耳 (講談社文庫)
 「自分の中では自信作です」の本人コメント。かつ短編6本中の2本が推理小説協会賞の短編賞候補に。単行本化されても候補に
 なる(しかしいずれも落選)。
 これは良い短編集ですね。「天使の耳」日本推理作家協会賞44回候補作、「鏡の中に」45回候補作で単行本で46回候補作。
 にもかかわらず44回は『夜の蝉』(北村薫)、45・46回は短編賞受賞作なし。ちなみに44回は『天使たちの探偵』(原りょう
 も落選してます。


で91年「このミス92年版」のトップは『行きずりの街』(志水辰夫)で傾向は前年同様に日本冒険小説協会系の作品が上位を
占め、高村薫氏がベスト10に2作、本格系は『水晶のピラミッド』(島田荘司)・『ぼくのミステリアスな日常』(若竹七海
といったところ。20位までに新本格系の人たちが名を連ねている状況でした。


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